形態学的検査と技術 血液と病理
わだい
巨核芽球の同定
榎本 康弘
1
1慶応大病理学
pp.406
発行日 1986年4月15日
Published Date 1986/4/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1543203654
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血液細胞の電顕的検索を10年近く行っているが,ここ数年はもっぱら各種白血病やその他の血液疾患において巨核球系幼若細胞(巨核芽球)の出現があるか否かを検索している.光顕的に巨核芽球を同定することは困難であるが,同定の補助に細胞化学を用いるとペルオキシダーゼ(PO)反応が陰性で,α-ナフチルアセテート・エステラーゼ,酸ホスファターゼないしβ-グルクロニダーゼ反応が細胞の一部に限局して明瞭に陽性となって,巨核芽球の出現が予測される.
電顕的には,Breton-Goriusらによって特異性が指摘された血小板にあるペルオキシダーゼ(PPO)が巨核芽球でも陽性を呈し,これを証明しないと芽球の同定はできない.しかし,巨核球系細胞ではこのPPOのほかに血小板特殊顆粒,血小板分離膜などの形成が見られるが,PPO以外はある程度の成熟がないと形成されない.通常の電顕で未分化な芽球としか同定できない細胞にPPOが証明されれば,巨核芽球といえる,この酵素は不安定なため,グルタールアルデヒド(GA)固定法では失活するといわれている.しかし,自験例のGA固定(リン酸緩衝液)の症例でも固定条件のよいときには成熟巨核球,血小板に陽性反応を得ているが,巨核芽球では陰性であった.
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