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δ感染症
小島 隆
1
1富山医薬大第三内科
pp.242-243
発行日 1986年3月1日
Published Date 1986/3/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1543203604
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イタリア北部の工業都市トリノにあるS. Giovanni Battista病院の消化器内科に勤務するM. Rizzettoらの研究グループは,B型肝炎肝組織内HBc抗原の局在を検討する目的でB型肝炎患者血清を用い蛍光抗体法により検討していたが,あるとき,同一肝組織であるにもかかわらず抗血清(I)は目的とする蛍光を認めるが抗血清(II)ではその蛍光は見られず,一方,検討する肝生検を替えてみると,時に逆の結果が出ることに気づいた.このような経過を経て,δ(デルタ)抗原は1977年,B型肝炎ウイルスに関連した別の新しい抗原として報告された.しかし最初はなかなか信用してもらえず,チンパンジーを用いた感染実験の成績を含め数多いデータの集積により,今日では既存の肝炎ウイルスとは独立した肝炎起惹性のウイルス様感染物質として認定されるに至っている.
このδ感染物質に関しては,すでにいくつかの点が明らかにされている.δ抗原抗体系のラジオイムノアッセイ(RIA)法が比較的早い時期に開発され,その結果δ抗体陽性者はB型肝炎ウイルス関連抗原抗体も同時に陽性を示すことが判明した.また,その分布はイタリアを中心として地中海沿岸諸国に見られ,米国での成績は移民イタリア人を中心に高頻度に分布し,その中でも特殊要因として麻薬常用者に多いことが明らかになった.
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