マスターしよう基本操作
血小板の分離と洗浄
田上 憲次郎
1
1東京都臨床医学総合研究所・循環器病研究部
pp.1105-1112
発行日 1984年12月1日
Published Date 1984/12/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1543203222
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血小板の種々の機能や生化学的性質が検査されるようになった.これらの種々の検査に用いられる血小板の浮遊液の作製の順序を模式的に示したのが図1である.
もっとも簡単なものはⒸの多血小板血漿(platelet-rich plasma;PRP)をそのまま用いる血小板凝集能測定であろう.これは広く用いられているが,さらに詳細な検討を要する場合,例えば生化学的な分析を試みる場合や,血漿成分の影響を排除して血小板だけの反応の観察を試みる場合は,一定の既知組成のメジウムに浮遊させる必要が往々に生じる.Ⓓのキレート剤であるEDTAを用いる遠心洗浄法は比較的簡単であるが,EDTAそのものが血小板にある種の不可逆的な変化をもたらすので,一定の用途に限定される.ⒺのEDTAを用いない遠心洗浄法は,血小板を生理的な形状(円板状)や性質(ADPによる凝集能など)を保持したままで血漿から分離し,洗浄できるように工夫された方法であり,もっとも応用範囲の広い基本的手法といえる.Ⓕのゲル濾過法はただ1回の操作で血小板を第Ⅷ因子-von Wille-brand因子複合体を除くほとんどすべての血漿蛋白から分離しうるという利点がある.ただこの場合PRPを直接にゲル濾過すると,血小板数がもとのPRPの70〜50%にまで希釈されるのが難点である.そこであらかじめⒺの方法で血漿から血小板を分離し,かつ濃縮した血小板浮遊液をⒻにかけるという方法もある.ⒹとⒺの場合は,血小板の数を任意に選択できる点も注目すべきである.
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