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アンチトロンビン製剤とその意義
青木 延雄
1
1自治医科大学止血血栓
pp.253-254
発行日 1984年3月1日
Published Date 1984/3/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1543202997
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アンチトロンビンⅢ(antithrombin Ⅲ;AT Ⅲ)は,正常に血漿中に存在する分子量65,000の糖蛋白であり,蛋白分解酵素(セリンプロテアーゼ)阻害因子の一つである.特に,活性化された凝固因子すなわちトロンビンとⅦ,Ⅸ,Ⅹ因子の活性型(これらはいずれもセリンプロテアーゼである)の活性を阻害する.
かつて,血漿中のトロンビン阻害活性は,その作用様式に従って,アンチトロンビンⅠ,Ⅱ,Ⅲ,Ⅳ,Ⅴ,Ⅵと分けられた.Ⅰはフィブリンのトロンビン吸着作用,Ⅱはヘパリンと協力してトロンビンを不活性化する因子(ヘパリン協同因子),Ⅲはトロンビンを時間をかけて徐々に不活性化する因子,Ⅳはプロトロンビンがトロンビンに活性化されるときに出現する抗トロンビン作用,Ⅴはフィブリン分解産物の抗トロンビン作用,Ⅵはリウマチ,膠原病などに出現する病的抗凝固因子を指したが,そのうちⅣはその存在が否定され,ⅡはⅢと同一の物質であることが判明し,結局,生理的に最も重要なのは,アンチトロンビンⅢ(ATⅢ)のみであることが現在広く認められている.したがって,Ⅲはあまり意味がなく,単にアンチトロンビンと呼ばれてもよいわけであるが,依然として習慣上Ⅲをつけて呼んでいる.
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