技術講座 血液
線溶試験5—FDPの測定
松田 保
1
1東京都老人総合研究所臨床第二生理
pp.988-992
発行日 1983年11月1日
Published Date 1983/11/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1543202896
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FDPとは
FDPはfibrinogen degradation productsまたはfibrin degradation productsの略であり,流血中のフィブリノゲン,または血管内に生じたフィブリンがプラスミンの作用によって分解された物質のことである.もちろん,フィブリノゲンの分解産物とフィブリンの分解産物とは異なった物質であって,この両者を同じ略号で呼ぶことは合理的ではない.しかし,このことにはFDPの測定と関連したいきさつがある.
これまで,プラスミノゲンやアンチプラスミンの測定の項で述べたように,血中の凝固因子や線溶因子,凝固・線溶阻止物質を純化し,それによりウサギその他の異種動物を免疫し,得られた抗血清を用い抗原抗体反応によって上記の物質の血中濃度を測定することができる.このような免疫学的な測定法が,血液凝固学の分野にはじめて応用されたのがFDPの測定についてである.フィブリノゲンはトロンビンの作用により凝固するが,生じたフィブリンがプラスミンの作用によって分解を受けると,トロンビンを加えてももはや凝固しないか,また凝固性が著しく障害される.したがって,もし,血中にプラスミンを生じてフィブリノゲンの分解産物を生ずると,血液を凝固させてフィブリノゲンをとり除いても,血清中にはフィブリノゲンの分解産物が残ることになる.フィブリノゲンの分解産物はその母蛋白であるフィブリノゲンと類似の抗原性をもっているので,抗原抗体反応を用いてその量を測定することができることになる1,2).
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