化学検査のうつりかわり・8
インスリン
島 健二
1
1阪大病院中検
pp.868-878
発行日 1973年8月15日
Published Date 1973/8/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1542908180
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インスリンをはじめ種々のペプチドホルモンの血中濃度はほぼ10−10M程度ときわめて微量である.この濃度から計算すると,インスリンが血中タンパク中に占める割合は1/7×107あるいはそれ以下ということになり,いかに微量であるかがうかがい知れる。インスリンは血中にこのように微量であるためと,その抽出,精製の困難さのために,これを化学的に測定することは不可能で,現在の測定法は主としてその生物学的活性を指標として測定する生物学的測定法と免疫学的活性を利用した免疫学的測定法に分けることができる.これまで開発された測定法の種類およびその感度は図1のごとくである.
インスリンの測定もインスリン製剤の力価検定など比較的高濃度の場合には家兎の血糖下降法やマウス痙攣法などin vivo系を用いる比較的感度の低い方法でも十分であるが,血中インスリン濃度の測定にはさらに高感度の測定法が必要となる.in vivo法も被検動物の内分泌腺機能を修飾(副腎や下垂体摘出,アロキサン処置など)することによりいくらか感度を増し,一部血中濃度測定も可能であるが1),必ずしも十分ではない.一方,筋,脂肪組織がインスリンに感受性を有することより,これらの組織を用いて開発されたin vitro系のインスリン測定法は著しく感度が良く,最少10μU/mlのインスリン検出をも可能にした2).
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