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胆汁酸とは
胆汁酸は肝細胞においてのみ特異的にコレステロールから1日約0.5g生成され,主にグリシンとタウリン,その一部は硫酸,グルクロン酸抱合された後,胆汁中に排泄される.胆汁中で胆汁酸はレシチンと複合ミセルを作って水に不溶性のコレステロールを溶存する.肝胆汁はいったん胆嚢に蓄えられ,濃縮されるが,食事刺激によるコレシストキニンの作用で腸管内に放出され,食事脂肪など非極性物質の腸管からの吸収を助ける.胆汁酸自身は,回腸末端部を中心とした腸管よりほとんど(97%)が吸収され,門脈を経て,肝にもどり,腸肝循環を繰り返している.コレステロールの腸肝循環と異なって,胆汁酸の腸肝循環系は極めて閉鎖的で,胆汁酸は大循環系とほとんど接触しない.肝にもどった胆汁酸は非常に効率よく肝細胞に摂取されるからである.したがって,末梢血にはごく微量(正常で約2μg/ml以下)の胆汁酸しか存在しない.胆汁酸の体内プールはヒトでは約3〜4gとされ,腸肝循環を逃れて糞便中に排泄された胆汁酸約0.5g/日に見合った分量が肝で新たにコレステロールから生合成され,動的平衡が保たれている.腸肝循環の回転数は食事ごとに約2回であり,食事脂質の量が多いときはその回転回数も増す.
ヒト血清胆汁酸は,肝で生成される一次胆汁酸であるコール酸(C),及びケノデオキシコール酸(CDC)と,これらが腸内細菌によってステロイド核のC-7位の脱水酸化を受けて生ずる二次胆汁酸,すなわちデオキシコール酸(DC),及びリトコール酸(LC)の4種類が主である.そのほかにケノデオキシコール酸の立体異性体でC-7位の水酸基がβ位に配位しているウルソデオキシコール酸(UDCA)が少量存在する.以上の各胆汁酸の構造式を図1に示すが,これらは人体中ではほとんどグリシン,タウリン(C-24位),またはリトコール酸の一部は硫酸(C-3位)との抱合型で存在し,血中ではアルブミンと結合しており,したがって,遊離型は正常状態ではほとんど存在しないとされていたが,最近の知見では遊離型もかなり存在するようである1).
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