東西南北
医療のシステム化と検査技師の役割
青沼 吉松
1
1慶応義塾大学経済学部
pp.400
発行日 1980年5月1日
Published Date 1980/5/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1543202058
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技術革新の影響を受けて,医療のシステム化が急速に進行している.個人の能力ではなく,集合された能力から成果を引き出す時代に入っているということを,これは意味する.現代的水準の医療は,"プロジェクト・チーム"によって担当される.特定の目的を達成するために,高度な専門家が相互に協力し合うのが,このチームの特質である.それは官僚制的な組織と区別される.一人のメンバーに権限が集中され,ほかのすべてが彼の命令に服従しなくてはならないようでは,異質的な各メンバーのそれぞれに高度な専門を十分に活用するのは難しい.
医療のシステム化が進んでくると,組織変革が避けられなくなってくるだろう.医師だけが高度な専門家であり,そのほかの医療従事者は単調作業,あるいはせいぜい非科学的経験に依存する行為をなしていればよい場合には,官僚制の採用は効率に合致するだろう.しかし,医師の周辺にあって彼らの仕事を支えるパラメディカル・スタッフの業務が複雑になってくると,事態は変わってくるはずである.複雑化につれて業務内容のすべてを,医師が熟知することが可能でなくなれば,このスタッフの自主性を認めないではすまされなくなる.かくて,単調作業を内容とする官僚制と対照される組織形態が生まれてくる.高度な専門家たるプロフェッショナルを対象とすることによって,これは特徴づけられる.
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