コーヒーブレイク
行列
T. S.
pp.759
発行日 1979年9月1日
Published Date 1979/9/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1543201911
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世間で国鉄離れと言われるように,確かに国鉄を利用する乗客は減った.いつでも好きな列車に乗れるというのは,利用者にとっては大変有難いことである.しかし,夏休み,冬休み,春休みをはじめ行楽シーズンになると様相は一変する.夏休みなど山へでも出かけようと思えば,その方面に向かう列車はいずれも超満員で,1週間前の発売日には数時間も行列に加わらないと切符を入手することは困難である.時には行列の中に加わっていてもわずか数人で売り切れとか,はなはだしいときには発売最初から売り切れと言われることがある.どうなっているかとわめいてみてもないものはないと言う.どこかで大量に予約しているらしい様子はうかがえる.
戦時中にも,生活必需物質が乏しく庶民は困ったものである.いつの間にか,物資の入手できる順序として軍官顔暗列という言葉がささやかれるようになった.言うまでもなく軍隊がオールマイティーで,官僚がこれに次ぎ,街の顔役がその次,それから闇と言われる非合法的物資の横流し,一番最後に行列に並んで一定量ずつ売ってもらうというのである.したがって行列にも並べない者は生活物資を得ることができなく,わずかな配給品だけで生きていかねばならなかった.配給品だけでは死ぬということを自ら実証された偉い学者がおられたことなど思い出される.
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