コーヒーブレイク
レンゲ草とわたし
O. T.
pp.541
発行日 1980年7月1日
Published Date 1980/7/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1543202088
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久方ぶりにふるさとの野山を訪れた.昔は田畑の手入れがよくゆき届いていたが,最近では休耕地がやたらと目につく.田畑の一角に群れて咲くレンゲの花を見て,ふとF老人のことを思い出した.
何年か前の春のことである.五月晴れの朝,都下のある病院に入院しているF老人を訪れた.彼は田畑に囲まれた所にポツンとある病院で長いこと療養生活を送っておられた.一見,顔の色つやは良く,元気そうであるが,長いこと結核をわずらい,回復に向かったころ糖尿病と診断され,それがもとで視力を全く失ってしまったという.この老人にとって人生の後半は病苦との戦いになるのかもしれない.
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