最近の検査技術
ベンチジンを用いないペルオキシダーゼ反応
小松 英昭
1
,
古沢 新平
1
,
佐藤 正枝
2
1獨協医科大学第3内科
2獨協医科大学中央検査科
pp.327-333
発行日 1978年4月1日
Published Date 1978/4/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1543201605
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血液学領域で行われる特殊染色のうちで,最も歴史の古いペルオキシダーゼ染色は,急性白血病の病型鑑別などに用いられ,その臨床的重要性は今日においてもほとんど変わっていない.本染色の基質としてベンチジンを用いる方法は,操作の簡便性や結果の安定性などのため,当初から主流を占めてきたが,近年大量のベンチジンを扱う工場労働者に膀胱癌の発生をみるなど,その発癌性が明らかになったため,1973年ごろより世界的に製造及び販売が禁止されるに至った.現在我が国では,昭和47年10月発令の労働安全衛生法により,その製造及び使用は労働大臣の定める基準に従う場合に限定されたため,日常的な使用は著しく困難となっていることは周知のことである.そのため,ベンチジンを使用しないペルオキシダーゼ染色法への転換が迫られているわけであるが,ベンチジンの製造が禁止される少し前から,タイミングよく稲垣ら1)はフルオレン誘導体を基質としたペルオキシダーゼ染色法を開発し,以後それに種々の改良が加えられているほか,最近になって表に示すような各種の基質を用いた方法が相次いで報告されており,ベンチジンなきあとも全く心配はないようである.
先日,文部省主催の国公私立大学病院臨床検査技術者研修会の際に,研修者の病院において現在行っているペルオキシダーゼ染色の方法を尋ねたところ,大部分の病院が依然として手持ちのベンチジンを用いていることを知ったが,その手持ちがなくなるとともにベンチジンを用いない方法へ移行せざるを得ないわけで,以下それらの方法の現況を解説し,各検査室における今後の検討の一助としていただければ幸いである.
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