検査の苦労ばなし
検査法改良の思いつき—あれこれ
佐々 学
1
1東大
pp.630-632
発行日 1977年8月1日
Published Date 1977/8/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1543201437
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私も長い間,寄生虫や衛生害虫などの検査法の研究を続けてきたが,その間にいろんなアイディアが浮かんで,ひとりで悦に入った経験が何度かある.いま一般に慣行されているいろんな検査法にしても,ちょっとした改良を加えると,もっと正確に,あるいは能率よく実施することができるといった場合も多いのではあるまいか.毎日決まった方法でいろんな検査を実施しているうちにも,こういう改良法開発の夢を持ちながら仕事をすることが一つの生き甲斐である.
終戦後から十年あまりは,日本は寄生虫だらけの国であった.従って,例えば寄生虫検便をどうして能率よく,かつ精度高く実施するかは集団検診としても臨床検査としても一つの重要なテーマであった.大便を普通の方法でスライドグラスに塗抹して直接に顕微鏡で調べる場合には,カバーグラス1枚につきせいぜい数mgの便しか調べられない.ところが,数十gの大便をスライドにやや厚く塗抹して,その上にピクリン酸を少量加えたグリセリン寒天液を滴下すると,しばらくして大便が透明となり,虫卵は黄色に着色して能率よく検査できることを見つけた.これは,1950年に医学書院の「公衆衛生」8巻1号39〜41ページに三浦さんと共著で発表したことがある.
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