基礎から応用へ
酵素作用の阻害
降矢 熒
1
,
降矢 震
2
1東京女子医大生化学
2千葉大・検査部
pp.25-28
発行日 1975年12月1日
Published Date 1975/12/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1543200937
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シオフキ(潮吹き)というハマグリ(蛤)に似た貝があるが,食いものにはならない.ハマグリと間違えてとってしまうから,いわば潮干狩りの邪魔ものである.シオフキがいくらいても,ハマグリのほうがずっと多ければ気にすることはない.どちらをつかむかは絶対数では決まらない.いずれかの見境なくとっている時は,その比で決まるからである.しかしよく見分けて間違うことが少なければ,たとえハマグリのほうが少なくても能率は下がらない.逆に,シオフキのほうがうまいと思い込んでいれば,ハマグリのほうが多くても,本当の獲物は少なくなる(図1).
酵素作用では,このような現象を相競性阻害(competitive inhibition)という.酵素の同じ場所(手)に,基質(ハマグリ)と阻害物質(シオフキ)が競い合って結合しようとするからである.熊手を持っているか,素手かで相違はするがそれなりの能力(Km)は変わりはないが,シオフキをとろうとする力(Kl)に分散されて,その能力が下がったようにみえる(Km値の増加).海に入ったら魚がいて,これを取って食った連中が腹痛を起こして寝込んでしまった.その人数分だけ全体のとれ高は減るが,とっている各個の能力は変わらない(Km不変).このような形のは非相競性阻害と呼ばれる.
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