技術講座 病理
細胞診検体の取り扱い方・5—乳腺
江尻 文子
1
1東京都がん検診センター検査部
pp.69-71
発行日 1975年11月1日
Published Date 1975/11/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1543200927
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近年細胞診が癌の診断に必須なものとなり,細胞診採取法の進歩によって,その実用性が臨床的にも広く認められるに至った.乳腺疾患についても細胞診の応用が普及し始めていることは事実である.特に乳癌のための集団検診や早期診断には強力な診断法の一つとなってきている.乳腺疾患の臨床診断法としては,通常,視診,触診,mammography及びtheremographyなどがあげられる.
しかしこれらの診断法の短所として,乳腺内の腫瘤がある程度大きくなって初めて認識しうることや,上皮,結合織の微細な組織構築の変化過程は判断することができない点がある.言い換えると病変の存在部位の診断はできても良性,悪性の判定は難しい.そこでこの欠点を補うためには顕微鏡的診断法によらねばならない.しかも組織の損傷が最も少ない細胞診の意義は大きい.しかもいまだ腫瘤の触れないような乳管癌由来の悪性細胞が乳頭分泌液から発見されることのある点などは,細胞診の大きな特徴といえよう.Kreuzerらによれば,触診,mammographyに加えて細胞診を併用すれば,乳癌の診断率は99.3%まで上昇させることができるという.しかし一般に細胞診では,いかに良い標本が得られたかによって正診率に重大な影響を及ぼすものである.特に細胞診採取法とその採取された細胞材料の処理法が拙劣であれば,全く診断を不可能にしてしまう.
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