基礎から応用へ
ヒトの生物学・2
佐藤 やす子
1
1横浜市大・第2解剖
pp.24-27
発行日 1975年1月1日
Published Date 1975/1/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1543200670
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1.遺伝子の構造と情報の伝達
ひとつの"種"(species)を形づくる形質は,遺伝子に担われて子孫へ伝えられる.このような遺伝現象の実体は,遺伝子の本体である核酸に組み込まれている遺伝情報を子孫へ受け渡すという生体内で行われる一連の生化学的な反応過程といえる.それでは核酸に組み込まれるとは具体的にはどういうことであろうか.ヒトの場合,核酸はDNAすなわちデオキシリボ核酸(desoxyribonucleic acid)であり,これはヌクレオチド(nucleotide)と呼ばれる構造上の単位から成り立っている.
つまりヌクレオチドは塩居-糖-リン酸という配列を作って核酸の1分子を構成している.核酸1分子を作っているヌクレオチドの数は,約80から数百万に及ぶものまであって,このような核酸の分子量は,少ないものでさえ2.3×104もある.ヒトをはじめ高等な動物や植物では,DNAはヒストンのような塩基性タンパク質と結びついて,デオキシリボ核タンパク質として,細胞核内に存在している.染色体はこれに更に他の核タンパク質やリボ核酸(RNA : ribonucleic acid)が加わってできる.核酸はどんな生物にも含まれているが,このことは前号で述べたファージ現象からもわかるように,DNAは生物と無生物を区別する自己増殖に不可欠の物質であることを示唆している.
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