基礎から応用へ
実験用動物—その生物学・3
佐藤 やす子
1
1横浜市大第2解剖
pp.24-27
発行日 1974年11月1日
Published Date 1974/11/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1543200613
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実験用動物に対する考え方のひとつに,実験動物は"生き物"というよりはむしろもっと機械的に,試薬であるとか測定用具であるという見方があることを強調してきた.目的によってはこのような考えのもとに生産された動物のほうがよい,というよりもむしろそうでなければならないという場合がある.しかし実験や研究の目的によっては,それはたとえば実験動物を最も日常的で自然な状態において行うのが望ましいような採血とか採尿あるいは,長期間の観測のために器具を動物にとりつけるといったような実験のためには,イヌはきわめて有用な動物であるという面も持つ.
すなわちイヌは,人間との共同生活つまりヒトが定着生活を始め,それに伴って生活が安定し余裕を持つようになったと思われる.旧石器時代の末,約12,000年ほど前から,人間とともに歴史を重ねてきているという関係を保ち続けている.この間にイヌは,人間に接触し服従することを覚えたというふうに考えられている.そこでイヌの特性のひとつである人間に対する服従性を,われわれが実験用動物としてのイヌの最大の価値として利用することに,イヌを活用する意義があるのではないだろうか.したがってイヌを実験用動物としてよりよく利用するには,イヌを実験者に十分慣れ親しませて,いつもすなおに安心して服従させることができるにように,取り扱う者は平常からイヌとおだやかに接しておくことが最も望ましい.
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