最近の検査技術
臨床細菌検査
奥田 茂
1
1大阪府立病院中検細菌
pp.33-36
発行日 1973年4月1日
Published Date 1973/4/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1543200115
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現在の臨床細菌検査は,検査そのものが診療行為に等しいほどに,得られた成績が直接患者の診療結果となり,またその責任が生じると同時に価値も生じていると言われる.実験ではやり直しができても,臨床検査では人命がかかっている.当然だれが行なっても,同じ結果が出なければならない.それには,十分な検査手技を中心とした技術と見識のある熟練技師を必要とするのである.そして,その結果は,もちろん,主治医の感染に対する目となるものでなければならない.
従来,感染症については,1つの病原菌が1つの病気をつくるという考え方が常識とされ,検査の必要性も,流行と防疫の面から見た衛生行政に関係づけられたものであった.現在でも,当然前記の内容は必要であるが,そのうえに臨床検査面では,個々の人間の疾患と直結した病原菌を考え,さらに,その追及のために,患者個人の微生物の生態を追い,次に診療過程での化学療法による病態の変化,および続発して生じる可能性のある菌交代症に対する予知に十分対処できる資料を結果として提示しなければならない.細菌検査室での精度管理は,まず再現性に富む技術の会得である.そのためには,その根底にある理論を理解しておくことも必要な条件だが,実際に行なわれている姿を見学し,身体で受け取る学習も十分に考えねばならない.
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