トピックス
中東呼吸器症候群(MERS)
福士 秀悦
1
,
西條 政幸
1
1国立感染症研究所ウイルス第一部
pp.288-291
発行日 2014年4月1日
Published Date 2014/4/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1543104222
- 有料閲覧
- 文献概要
- 1ページ目
- 参考文献
はじめに
中東呼吸器症候群(middle east respiratory syndrome,MERS)は2012年にサウジアラビアで最初に報告された,MERSコロナウイルス(middle east respiratory syndrome-coronavirus,MERS-CoV)による重症の呼吸器疾患である1).
最初の報告後の数カ月間は,MERS患者発生の報告はわずかであった.しかし,2013年4月以降,集団感染事例が発生するなど相次いでMERS患者が報告され,患者数は増加傾向にある(図1).2014年1月までに計178人のMERS患者が報告され,75人が死亡(致死率42%)している2).全てアラビア半島の6カ国(サウジアラビア,カタール,ヨルダン,アラブ首長国連邦,クウェート,オマーン)在住,あるいはこれらの地域に渡航した者,および,その接触者と関連があった.ウイルスの感染経路は十分に把握されていないが,なかにはヒトとヒトとの接触による感染事例も報告されている.イギリス,ドイツ,フランス,チュニジア,イタリアでは輸入症例が報告されている.
日本国内で患者発生は報告されていないが,中東への渡航者が帰国後にMERSを発症する可能性もある.このため,MERS感染事例や疫学情報に基づいたリスクアセスメントおよび,MERS-CoV感染の有無を早期に検査する体制の整備が重要である.本稿では,これまでに明らかになっているMERSの特徴と,わが国で整備されている実験室診断法について概説する.
Copyright © 2014, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.