増刊号 この検査データを読めますか?―検査値から病態を探る
Ⅲ 内分泌代謝疾患
4 高カルシウム血症を指摘された52歳の女性骨粗鬆症患者《原発性副甲状腺機能亢進症》
竹内 靖博
1
1虎の門病院内分泌センター
pp.963-968
発行日 2012年9月15日
Published Date 2012/9/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1543103683
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Ⅰ.症例
1.【症例1】 副甲状腺手術を受けた典型例
52歳の女性.骨粗鬆症と診断されているが,薬物治療は受けていない.人間ドックで高カルシウム(Ca)血症を指摘.自覚症状としては夜間の頻尿を認めていた.尿路結石なし.【症例1】 受診時検査データに示したような検査所見であり,原発性副甲状腺機能亢進症(primary hyperparathyroidism,PHPT)と診断された.血清Ca>11.1mg/dLかつ骨粗鬆症を認めるため手術適応ありと判断された.超音波検査と99mTc-MIBI副甲状腺シンチグラフィ検査から左上副甲状腺に腫大を認めたため同部位の副甲状腺腺腫摘除術を行い,PHPTの治癒を得た.関連検査値の推移を表1に示す.
PTHの血中半減期は10分未満であり,術直後には正常化もしくは基準値以下に低下する.施設によっては術中PTH迅速測定を行い,副甲状腺摘除前の1/2以下に低下すれば責任病巣が切除されたと判定している.血清Ca値もPTHの低下に伴って速やかに低下し,手術翌朝には正Caもしくは低Ca血症となる.術前の罹病期間が長期であったり,血中PTH濃度や骨代謝マーカーが著しく高値であった場合には,術後の低Ca血症が遷延することがある.このような例ではCa製剤および活性型ビタミンD3の投与を積極的に行い,血清Ca値を正常に維持するよう努める.術後に低Ca血症が遷延する場合には飢餓骨(hungry bone)症候群と呼ばれる病態が疑われる.この病態は,術前の骨病変が著しい症例において,術後骨病変の改善に時間を要するために生じると考えられている.
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