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はじめに
造血幹細胞(hematopoietic stem cell,HSC)は自己複製能(self-renewal capacity)と多分化能(multipotentiality)を有する細胞であり,成人では主に骨髄の中に存在するが,骨髄の中だけでなく,末梢血中にもわずかながら流れている.HSCは,サイトカイン(cytokine)の一種である顆粒球コロニー刺激因子(granulocyte colony-stimulating factor,G-CSF)などにより,末梢血中に動員することができるが,HSCは臍帯血中にも多く含まれている.
HSCと成熟細胞(赤血球,好中球,単球/マクロファージ,血小板,リンパ球)の間には,分化段階の造血前駆細胞(hematopoietic progenitor cell,HPC)が存在するが,造血幹細胞移植(hematopoietic stem cell transplantation,HSCT)はそれらのHSCおよびHPCを取り出して,患者の血管(静脈)の中に輸注する方法であり,HSCの起源により,骨髄移植,末梢血幹細胞移植および臍帯血移植に分類される(表1).また,患者とドナー(提供者)の関係による分類から,患者自身のHSCを移植する自家(自己)移植,一卵性双生児(双子)のHSCを移植する同系移植,自分・双子以外の人(兄弟姉妹,非血縁者)のHSCを移植する同種移植がある.さらに近年では,1990年代後半にconditioningを骨髄非破壊的にした骨髄非破壊的造血幹細胞移植(non-myeloablative hematopoietic stem cell transplantation,NST)あるいは治療強度を軽減した骨髄破壊的造血幹細胞移植(reduced-intensity hematopoietic stem cell transplantation,RIST)が開発され,ドナーの免疫担当細胞に腫瘍細胞を攻撃させること〔移植片対白血病効果:GVL(graft versus leukemia)効果〕を目的とした移植方法(いわゆるミニ移植)により,高齢者や臓器障害がある患者へも移植の適応が広がっている1,2).
このようにHSCTは多様化しており,各疾患の治療戦略の立て方や移植の適応も変わりつつあることから,HSC評価を含めた,移植前後の患者管理の支援において検査部門の重要性が高まっている.
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