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血清リン脂質の質量分析とその臨床応用
日高 宏哉
1
1信州大学医学部保健学科生体情報検査学講座
pp.74-76
発行日 2012年1月1日
Published Date 2012/1/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1543103428
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はじめに
リン脂質は生体脂質の主要構成成分であり,細胞の構造保持や幅広い生理機能をもつだけでなく,血液中ではリポ蛋白を形成して,リン脂質自体や脂肪酸の細胞への供給や物質の輸送などの役割を果たしている1).リン脂質は,構成する骨格や脂肪酸側鎖の違いやその代謝産物など多種多様な分子であるため,血清中総リン脂質濃度の測定だけでは臨床的評価が十分でない2).
これまで,リン脂質組成測定は,各種のクロマトグラフィ法で行われてきたが,その分析操作が煩雑であった.マトリックス支援レーザー脱離イオン化飛行時間型質量分析計(matrix assisted laser desorption io-nization time-of-flight mass spectrometry,MALDI-TOF MS)は,操作が簡便で,短時間でリン脂質の分子種だけでなく,構成する脂肪酸の種類の違いや代謝産物まで同定ができるため,各種疾患の脂質代謝異常症の診断の指標や機序の解明など臨床検査へ応用が期待される.
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