Special Topics
宇宙医学とFlight Surgeon
松本 暁子
1
1宇宙航空研究開発機構(JAXA)宇宙飛行士健康管理グループ・宇宙医学生物学研究室
pp.301-305
発行日 2011年4月1日
Published Date 2011/4/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1543103116
- 有料閲覧
- 文献概要
- 1ページ目
それは,2010年4月21日の早朝のことだった.夜明けとともに地平線から刻々と白みがかる群青色のグラデーションの空には,白とオレンジ色の雲がからまるようにして幻想的な雰囲気をかもしだし,地上にいる人々の目を引きつけていた.われわれに何らかのメッセージを伝えているかのように.これまでに見たことのない何ともいえない美しい空を,私はしばらくの間,見とれていた.場所は米国フロリダ州Kennedy宇宙センター.あの雲は,Space Shuttle Discovery打ち上げが残した軌跡であった.
その4時間ほど前,まだ周囲が暗いなか,私はロイヤルブルーのフライトスーツを着て建物の外に出た.すると,正面には報道陣がずらりと並びカメラを構え,上空にはヘリコプターが数台待機し,厳戒態勢であることがうかがわれた.私がそれまで滞在していたのは,NASA(the National Aeronautics and Space Administration)Kennedy宇宙センターのCrew Quartersといわれる隔離施設である.われわれが建物を出て車に乗り込んだ後,しばらくして同じ建物からオレンジ色の与圧服を着たSpace Shuttle Discovery号の宇宙飛行士7人が出てきた.その後,われわれはconvoyをくんで発射場へ向かい,飛行士達は宇宙へと旅立ったのである.
Copyright © 2011, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.