Current Abstract
特発性食道破裂—American Surgeon, April 1969
pp.784
発行日 1970年5月20日
Published Date 1970/5/20
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1402203153
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食道はまま自然に破裂することがあるが,それによる死を避けるには,診断を的確迅速につけるとともに,外科的処置をすみやかに実施する必要がある.Lernerは,嘔吐と吐き気がしばしば食道破裂のキッカケになる,と述べている.これらの症状は,圧倒的な進行性の胸痛が始まると,消退するのがふつうである.この胸痛は,阿片剤をもちいてもさほど軽くはならない.皮下気腫がしばしばみられるが,はじめは胸骨上部のV字型の刻み目のところに出現し,ついで頸部,顔面,ときには躯幹にまで拡がることがある.水胸がしばしばみられる.ときに紅斑が頸に現われ,これに触れると痛むことがあるが,これは,進行した縦隔洞炎の晩期徴候の1つである.患者は判でも押したように不安に陥るが,ときに循環性の虚脱の証拠を示す.本症は男性にもっとも多く,とくに酒を飲みすぎたあとに発生する.
鑑別診断の困難なことがままある.病初においては,病歴と臨床所見の両者からいって,食道の自然破裂は,急性膵炎に酷似する.お酒の飲みすぎと嘔吐が,両疾患にしばしば先行するからである.血清アミラーゼが正常なら,膵炎を除外してよい.穿孔性消化性潰瘍と間違うことなきにしもあらずである.鑑別診断に役立つのは,食道破裂では猛烈な痛みが漸次増すとともに,上腹部の硬さが減少するが,これに反して穿孔性の消化性潰瘍では一般にその逆が真だという点である.心筋硬塞は,心電図が正常で心疾患の病歴がなければ,除外してよい.解離性大動脈瘤の痛みは,強さの点でも,裂くような痛みの点でも,食道破裂のそれによく似ているが,穿孔すれば,漸次消退するのに反し,食道破裂の痛みは徐々に激しさを増すのである.
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