役に立つ免疫組織化学●免疫組織化学で注目すべき抗体
前立腺癌とp63
米田 操
1
,
白石 泰三
2
1三重大学大学院医学研究科腫瘍病理学
2三重大学大学院医学研究科
pp.1253-1255
発行日 2010年12月1日
Published Date 2010/12/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1543103008
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はじめに
わが国における前立腺癌の死亡者数は,全癌死亡の5%であり(2006年現在),他部位の癌と比較すると突出した増加を示している1).最近では,PSA(prostate specific antigen)による前立腺検診が盛んに行われ,早期前立腺癌の発見が可能になってきた.それに伴い針生検での病理組織診断も増加している.
前立腺腺房には,分泌細胞とその周囲に基底細胞が存在している.前立腺癌では基底細胞が消失しているので癌の組織診断には有用な所見である.しかし,残念ながらHE(hematoxilin-eosin)染色標本では基底細胞の同定が困難な場合が多い.p63は基底細胞の核に存在し,分泌細胞は陰性であることが知られている.したがって,HE染色標本で異型腺管がみられた場合にはp63を用いた免疫染色により基底細胞を確認することが重要となる.p63陽性細胞,すなわち基底細胞が欠如していれば癌と診断される.基底細胞マーカーには,高分子サイトケラチンもあり,これに対する抗体(34βE12)での免疫染色も有用である.p63は基底細胞の核,34βE12は,細胞質を染めるので両者のカクテルによる重染色も使われている.前立腺癌細胞そのものの免疫染色には,AMACR(α-methylacyl coaracemase)などが用いられる.本稿ではp63,34βE12を中心に免疫染色の条件設定,抗体特性,診断意義について解説する.
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