増刊号 顕微鏡検査のコツ―臨床に役立つ形態学
V 細胞診
各論
7 甲状腺
丸田 淳子
1
1野口病院研究検査科
pp.1191-1193
発行日 2009年9月15日
Published Date 2009/9/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1543102615
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はじめに
甲状腺細胞診標本の鏡検では,元となる組織構築を推定することが大切である1,2).
まず,弱拡大で背景や細胞の集塊や出現様式を観察する.標本全体に薄い液状コロイドがみられる場合は腺腫様甲状腺腫を,細胞集塊内や背景に円形の硝子様光沢のある硝子様コロイドがみられる場合は濾胞性病変を念頭に置く.同様に,背景のアミロイドは髄様癌,多数のリンパ球は慢性甲状腺炎,炎症細胞は急性化膿性甲状腺炎や未分化癌,ヘモジデリンを貪食した組織球は囊胞性病変を考える.出現する細胞集塊は組織構築を反映しており,乳頭構造は乳頭癌,腺腫様甲状腺腫,濾胞構造は濾胞性腫瘍,腺腫様甲状腺腫,乳頭癌,孤立散在性は悪性リンパ腫,髄様癌,未分化癌で観察される.
次に強拡大で,細胞個々の細胞質と核を観察する.好酸性細胞質は,好酸性細胞型腫瘍,慢性甲状腺炎,腺腫様甲状腺腫に出現する.核が小型円形で均一な配列を示す場合は良性病変を,核縁が不正で不規則な重積を示す場合は悪性病変を疑う.特に,核溝や核内細胞質封入体が高頻度に観察される場合は乳頭癌を疑う.クロマチンは組織型を推定する重要な所見であり,すりガラス(微細顆粒)状なら乳頭癌,粗顆粒状なら濾胞癌,粗大顆粒状なら髄様癌を推定する.
以下に,日常遭遇する機会の多い病変の特徴を述べる.
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