増刊号 顕微鏡検査のコツ―臨床に役立つ形態学
III 一般検査
総論
2 顕微鏡標本の作製法
1 尿沈渣
油野 友二
1
1金沢赤十字病院検査部
pp.1001-1005
発行日 2009年9月15日
Published Date 2009/9/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1543102570
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1 沈渣標本作製の目的と作製技術の重要性
尿沈渣検査は,有形尿中の成分である上皮細胞類,血球類,円柱類,結晶・塩類,細菌類についてそれぞれ正確に分類し,定量的な計数値を求める検査である.では,その尿沈渣検査の臨床的意義は何かといえば,第1に腎尿路系に病変があるかどうかのスクリーニング,第2に既に確認された腎尿路系の病変に対する治療効果の観察や薬剤の副作用の状況についての情報収集の2点にあると考える.しかし,この2点は決して尿沈渣検査のみに求められていることではなく,尿蛋白,尿潜血反応に代表される尿定性検査も同様の目的のために実施される.つまり,尿沈渣検査は定性試験結果により推定される血尿や尿路感染症の確定に重要な情報であり,各種円柱や卵円形脂肪体などの出現によって腎炎などの病態把握の補助情報の提供と位置づけられよう.
近年,血尿診断ガイドライン1)の策定により,血尿の定義が明確に示された.これにより,顕微鏡的血尿においては潜血反応陽性で尿沈渣検査による赤血球数5個/HPF以上で血尿とされることから,より再現性・正確性など精度の高い検査が求められている.標本作製技術は,まさにこの精度保証に直結したポイントである.また,色調や混濁など標本作製過程で極めて有用な情報が得られることがあり,よく尿沈渣検査の目的を理解したうえでの業務が肝要である.
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