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はじめに
心臓リハビリテーション(以下,心リハ)は,最近では心疾患治療のなかに占める位置が徐々に大きくなってきており,重要な治療法となっている.運動耐容能や自律神経機能,QOL(quality of life)や生命予後などの多くの指標を改善する効果があることが知られている.
わが国における心リハの保険適用としては,長い間急性心筋梗塞,狭心症,開心術後に限られていたが,2006年4月から慢性心不全(chronic heart failure,CHF),大血管疾患および末梢動脈疾患が加わり,多くの心・血管疾患の病態を網羅できるようになった(表1).適応疾患が広がったことからも心リハ施行前や施行中にその病態や循環動態の的確な評価を行うことが重要となっている.
循環動態を評価する生理検査としても最近では心臓超音波検査による評価法が飛躍的に発達したことをはじめ,多くの検査が行われるようになっている.心リハの適応の決定,運動処方の作成などに対しては,理学的所見や患者の症状などをきちんと評価することは当然であるが,心電図,胸部X線,核医学検査や冠動脈CT(computed tomography)などの画像診断検査,運動負荷試験などによる多角的な評価を行うことが必要となる.
心リハに関連した循環機能の検査としては,リハビリテーション参加者の心機能などを評価する機器と,心リハに直接関与する運動負荷装置や呼気ガス分析装置などの二つに分けて考える必要がある.前者の検査としては心リハ参加者の心機能や残存虚血の有無,運動に関連した不整脈の評価が非常に重要である.実際には心臓超音波検査による各種心機能の精査が非侵襲的であり精度も高くなってきていることから,近年その重要性が増している.心臓超音波検査に関しては本号の別項に詳細な記載があるのでそちらを参照していただきたい.最近ではマルチスライスCTによる冠動脈狭窄度やプラーク性状の精査,心臓MRI(magnetic resonance imaging)検査による心筋の精密な検査などが可能になり,診断および治療に対して威力を発揮している.
本稿で取り上げるのは後者の検査のうちでも心リハに直接関係する運動負荷試験であり,なかでも呼気ガス分析を併用した心肺運動負荷試験(cardiopulmonary exercise testing,CPX)に的を絞って解説する.
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