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はじめに
わが国の原発性肝癌による死亡者数はこの30年間で約3倍に増加し,現在3万5千人に達しようとしている.そのうち,B型およびC型の慢性肝炎・肝硬変患者は全体の約90%を占めており,ウイルス性肝炎患者の定期的な検査は肝癌の早期発見のためにも必須となっている.
慢性肝疾患における病期ステージの終末像は肝硬変であり,その過程で肝臓は線維化が進み,発癌のリスクが上がっていく.すなわち慢性肝疾患患者の肝線維化の程度を知ることは発癌リスクを予測するうえで非常に重要であり,インターフェロンの可否など今後の治療方針にも影響する.また,経時的な肝線維化の程度を知ることは,病期ステージの進行度合いや治療効果判定上でも必要である.
肝細胞癌の発症の段階で大事な検査には腫瘍マーカーを筆頭とした血液検査や超音波,CT(computed tomography),MRI(magnetic resonance imaging)などの画像診断が挙げられるが,一長一短があり,肝癌発症のリスクの算定は不可能である.肝細胞癌の診断において画像診断の重要性は既知の事実であるが,慢性肝炎の腹部超音波検査では,肝縁の鈍化,肝表面の不整,肝内エコーレベルの変化,肝腫大,腹腔内リンパ節腫大などは認識できるが,これらは正常肝との鑑別にはなっても,現在の慢性肝炎のステージを診断することは困難である.
図1には1999年にYoshidaら2)が発表した,新犬山分類によるC型慢性肝炎の各線維化ステージにおける発癌率を示した.吉田らはF0,1では160例中3例で発癌し,年間発癌率は0.45%,F2で1.99%,F3で5.34%,F4で7.88%と報告しており,現在の線維化ステージを診断することにより,発癌リスクの算定が可能ということを示唆している.
現在,肝線維化の程度を知るためには肝生検を行わなければならず,線維化の経時的変化を捉えるためには何回も肝生検を繰り返さなければならないのが現状である.しかし,侵襲のある検査であり施行に際しては入院が必要な点,痛みを伴う点,出血のリスク(肝硬変が進行すると肝の合成能低下と脾機能が亢進し,血小板数の減少と凝固因子などの産生低下がある),稀に死亡例の報告もある点などから,繰り返し行うことは困難である.
また,肝生検による組織所見には部位や採取組織の大きさによる診断の違いが指摘されている.さらに病理診断では,肝線維化のステージは半定量的に診断されるために,病理医間の診断の違い,あるいは同じ病理医でも時間による診断の違いがあるといわれている.
線維化評価の指標として血小板数が線維化との相関が良好とされおり,一般的に新犬山分類におけるF1で17×104/μl,F2で15×104/μl,F3で13×104/μl,F4で10×104/μl以下とされているが,高度な肝硬変になると血小板数はほぼ横ばいとなってしまい,より広いダイナミックレンジをもった検査法の開発が必要とされていた.
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