トピックス
過冷却促進物
藤川 清三
1
,
春日 純
1
1北海道大学大学院農学研究院環境資源学部門
pp.546-549
発行日 2008年6月1日
Published Date 2008/6/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1543102110
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はじめに
水溶液を氷点下温度で長期間にわたり過冷却させることができれば,凍結では変成してしまう生物・医療材料などを,氷点下温度で低温保存することができ,一般的なプラス温度での低温保存に比べてより長期の保存が可能となる.しかし,現在のところ過冷却状態で材料を氷点下温度で長期間保存する試みはほとんど行われていない.この理由は,過冷却という現象が,あくまでも物理的に安定な状態ではないことによる.さらに,既存の過冷却促進物質は種類が非常に少なく,過冷却活性も比較的低いため,実用化は図られていない.しかし最近,寒冷地に成育する樹木において,-40°C付近の低温下で数週間以上にわたり細胞内の水分を過冷却により液体状態に保ったまま越冬する細胞から,これまでに知られている物質のなかで最大の活性をもつ,新規の過冷却促進物質が単離された.本稿では,これらのトピックを含めて過冷却促進物質について紹介する.
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