Japanese
English
特集 過酸化物
過酸化物の化学
Chemistry and biochemistry of peroxides.
清水 孝雄
1
Takao Shimizu
1
1京都大学医学部医化学教室
1Department of Medical Chemistry, Kyoto University Faculty of Medicine
pp.7-23
発行日 1981年1月1日
Published Date 1981/1/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1406204695
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I.はじめに
地球の気圏・水圏・岩石圏におけるClark数(各元素の重量%)によると酸素は第1位で50%をしめ,2位の珪素(Si)の26%,3位のアルミニウムの8%を大きくひき離している。このうち大部分は岩石中に金属酸化物の形で蓄積されている。過酸化物(peroxides)とは,O22—を有する酸化物と定義される1)。最も簡単な構造の過酸化水素(H2O2)のO—Oの原子間距離は1.3Åで基底状態の酸索分子(O2)の1.21Åより長く,結合力が弱い(ちなみにsinglet oxygen (1O2)は1.22—1.23Å,O2—は1.38Åである)。したがつて他の物質との反応性に富んでいることになる。この他,一価および二価(IIa,IIb)の金属が置換したLi2O2,BaO2,ZnO2,CdO2なども過酸化物である。これら金属過酸化物については松浦の著2)に詳しい。生体にとつて重要なものは,不飽和脂肪酸の過酸化物で"過酸化脂質"lipidperoxidesとよばれる。この中には特殊な五員環構造を有するに至つたプロスタグランジンとその類縁体が含まれる。
本稿では,1)過酸化水素と活性酸素,2)過酸化脂質とlipoxygenase,3)プロスタグランジン類縁体,の三項目に焦点をしぼり,主として生化学的側面より筆者らの成績を含めて概説する。より生物学的側面は,本特集の以下の3編の他,いくつかの総説3〜7)および專門誌8)に詳しく記載されている。
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