- 有料閲覧
- 文献概要
- 1ページ目
はじめに
長引く不況による厳しい経済状況と少子高齢化は,医療を取り巻く環境を大きく変化させようとしている.1961年に制定された日本の医療保険制度は平均寿命や健康寿命を延長させ世界最高をもたらした.しかしながら現在,世界に誇る国民皆保険が医療費高騰によって崩れようとしている.このようななか,政府は「構造改革」「規制緩和」「医療費抑制」という政策から医療提供体制の見直しや診療報酬のマイナス改定など医療制度改革を順次行ってきている.今後も患者の立場に立った効率的な質の高い医療の提供や健康的な生活の質を高めるための保健医療サービスの提供を目指し改革がなされていくものと思われる.
臨床検査は医療のなかで診療の担い手として発展してきた.しかし近年,病院検査部の不要論まで飛び出し臨床検査をめぐる環境は非常に厳しい状況である.現にここ数年の間に病院経営上からいくつかの大病院においてブランチラボ化,FMS(facility management system)化が行われてきている.このような状況において臨床検査技師としてなんらかの方策を講じる必要性が生じてきた.
一方,全国臨床検査技師教育施設協議会の2000年の調査によると臨床検査技師養成施設から病院,診療所などの医療機関に就職した者は51.2%であった.その他は検査センターをはじめ検診事業施設,臨床検査機器などの関連企業であった.以前は,ほとんどの卒業生が病院検査室に就職していたが年々減少傾向にあり,病院への就職が厳しくなってきている.これらのことから臨床検査技師として付加価値を付けたり,業務拡大を行い臨床検査技師としてのアイデンティティーを社会に打ち出さねばならない必要性も生じてきた.
臨床検査の知識を医療ばかりでなく他の分野に活用することも国民の健康を保持・増進させることにつながり臨床検査技師としての重要な使命である.そこで臨床検査技師の持つ豊富な知識や技術を活用し,臨床検査ばかりでなく他の分野にも進出できるような業務拡大の方法があるかを考える.
Copyright © 2003, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.