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秋田(Mody)マウスとインスリン遺伝子異常症
泉 哲郎
1
1群馬大学生体調節研究所遺伝子応用分野
pp.849-851
発行日 2003年9月1日
Published Date 2003/9/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1543101531
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糖尿病モデル・秋田マウスの発見とその原因遺伝子解明
秋田(別名Mody)マウスは,小泉昭夫博士(現京都大学大学院医学研究科)により秋田大学C57BL/6マウスコロニーから発見された,単一遺伝子性糖尿病マウスである1).本マウスは,500mg/dl前後の極めて高い随時血糖値を示し,それに伴い多飲・多尿を呈する.肥満,インスリン抵抗性は示さないが,血中インスリン値,単離膵島からのグルコース刺激に対するインスリン分泌反応は,著しく低下している.遺伝学的解析により,秋田マウス糖尿病の原因遺伝子は,第7番染色体に存在することが明らかにされた.その遺伝形式(常染色体優性遺伝),発症時期(若年発症),病態(膵β細胞の機能異常が一次的原因と考えられる)が,ヒトにおけるMODY(maturity-onset diabetes of the young)と呼ばれるタイプの糖尿病に類似していることから,原因遺伝子座はmouse Modyと命名された.
われわれは,小泉博士と共同でMody遺伝子の同定に取り組み,インスリン2遺伝子の一方の対立遺伝子の点突然変異が,秋田マウス糖尿病の原因であることを発見した2).この変異は,インスリンA鎖第7番目のシステイン残基をチロシン残基に置換し,A・B鎖間の分子内ジスルフィド結合〔S-S〕の1つを形成させなくし,立体構造を大きく変化させることが推察された(図).
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