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はじめに
現在わが国で臨床的に用いられている主なGFR測定法は,内因性クレアチニンクリアランス(creatine clearance,Ccr)や外因性チオ硫酸ナトリウムクリアランス(Cthio)などがあり,また,GFRを推定するための腎機能マーカーとして血清クレアチニン値,血液尿素窒素(blood urea nitrogen,BUN)および低分子蛋白質の血清β2-マイクログロブリン(β2-microglobulin,β2-m)値などが用いられている.
Cthioを測定するには,静脈注射(静注)や正確な蓄尿が必要で患者への負担が大きい.また,測定操作も煩雑であるという問題点がある.一方,Ccrを算出するためには,標準的に24時間の蓄尿が必要なので,その正確性が問題点として指摘されている1).BUN値は,食事としての蛋白質摂取量の影響を強く受ける.血清クレアチニンは食事の影響は少ないが,筋肉量に関係するため運動の影響を受ける.また,血清クレアチニン値が1mg/dl以下は,GFRの低下を反映しにくいブラインド領域と呼ばれており,腎疾患早期の診断には適していない.血清β2-m値は,悪性腫瘍および自己免疫疾患の場合でも高値を示す.このように腎前性の影響がある場合には,かならずしも理想的なGFRの血清マーカーではない.
シスタチンCは,シスタチンスーパーファミリーに属し,分子量13kDaの塩基性低分子蛋白である.シスタチンCは全身の有核細胞に存在しており,プロテアーゼインヒビターとして細菌の産生するプロテアーゼから細胞を防御する働きがある.他の血漿蛋白と複合体を形成せず,腎糸球体から濾過され近位尿細管で再吸収される2,3).そのため,GFRの低下とシスタチンC濃度は相関すると言われており4,5),GFRの低下は,シスタチンC濃度を上昇させる.また,血清クレアチニンと違い筋肉量の影響も受けない.これらのことから,腎前性の影響の少ない,早期腎機能マーカーとしてシスタチンCが注目されている.
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