- 有料閲覧
- 文献概要
- 参考文献
独そう的文献は一流誌だけにあるのか
先頃,某新聞に特集された「国家戦略を考える」という連載のなかで,科学の進歩に寄与する世界の雑誌という報告が目に留まった.そこには,最も影響力のある雑誌として“Nature",“Science”などの名前が挙がっていた.英国の科学週刊誌である“Nature”では,毎週投稿されてくる200編近い論文は編集委員会により最終的には18編ほどの論文に絞られ,毎週掲載されるが,残った投稿論文はすべてボツにされるという.ボツにされた論文の多くはたぶん他の雑誌に投稿・掲載されると考えると,価値ある論文の多くは一流誌である“Nature”以外の雑誌に掲載されることになる.
一方,研究者のなかには,却下される恐れが高く,同業者による盗用の危険がある一流誌への投稿を避ける者もいるという.クォークを発見したMurray Gell-Mannはこの論文を欧州の新しい雑誌である“Physics Letters”に投稿している1).一方,同じ発見に到達したGeorge Zweigは米国の一流誌の“Physical Review Letters”への投稿に固執したが,却下されたうえ,論文そのものの公表を断念してしまった.クォークの発見者はMurray Gell-Mann,George Zweigとなっているが,Zweigの論文は正式には発表されていない.また,Solomon A. BersonとRosalyn S. Yalouのラジオイムノアッセイに基づくインスリン測定法に関する論文は“Science”に投稿されたが,ただちに却下されたため治療研究誌で公表された2).
このように一流誌だけに独そう的な論文が掲載されるわけではない.
Copyright © 2006, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.