検査の苦労ばなし
本物をやる難しさ
斎藤 正行
1
1北里大臨床病理
pp.390-391
発行日 1977年5月1日
Published Date 1977/5/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1543201364
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私が検査というものにふれたのは昭和19年で,学生時代に聖ルカ国際病院の今の化学検査室で血沈の実験をやったことを覚えている.その後軍隊に行って帰って来たら病院は接収されていて,私たちは近くの小さな木造の2階建で診療を行うことになった.臨床の傍ら検査室をお手伝いしたが,なんにもない時代であったのであきらめていて特に苦労もなかった.しかし道路1つ先の進駐軍病院にはなんでもある.乞食のように試薬をもらってきては検査をしたが,苦労というよりいたしかたなかったことであった.
検査で一番苦労したのはと問われると,正直な話"今"とお答えしたい.他の人は北里大学病院の立派な建物,大きな検査棟,設備,多勢の技師を見て,斎藤はさぞ満足で悠々閑々としているのだろうとみているようだが,私は現在月曜の朝7時半から土曜の午後5時過ぎまで,ほとんど1日も休みなく病院を走り回っている.おかげで体重が7kgも減って快調であるが,東京の会合にも失礼ばかりしているので,同学の方々と疎遠になってきて寂しい.
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