連載 失敗から学び磨く検査技術 病理標本作製法
細胞診のアーティファクト―検体採取,塗抹,固定に由来するアーティファクト―乾燥
阿部 仁
1
1慶應義塾大学医学部病理学教室
pp.670-672
発行日 2006年7月1日
Published Date 2006/7/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1543100948
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細胞に立体感がないし,構造を見てとることのできない標本だ.どうしてこんなことになったのだろうか.
図1はリンパ節穿刺吸引材料の95%エタノール湿固定されたパパニコロウ染色(Papanicolaou stain)である.核がヘマトキシリンに無構造にべっとりと均一に染色されて,核内のクロマチン構造が明らかでない.また,各細胞間の細胞質境界も不明瞭で立体感がなく平面的で標本全体にぼやけた像になっている.図2の腹水も図1と同様に核内のクロマチン構造は不明瞭で,核小体らしきものがかろうじて見られる(↑).
どうしてこのような見づらい,判定に困難をきたす標本になってしまったのだろうか.
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