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呼吸器系の組織構造
呼吸器系は大別して気道と肺とに分かれ,前者は鼻腔,咽頭,喉頭,気管および気管支から成る.鼻腔は多列線毛円柱上皮により覆われている.咽頭は上・中・下咽頭に分けられ,上咽頭は多列線毛円柱上皮,中・下咽頭は重層扁平上皮に覆われている.喉頭はその大部分が杯細胞を含む多列線毛円柱上皮に覆われ,一部(喉頭蓋前面,声帯ヒダ,室ヒダの一部)に重層扁平上皮が存在し,輪状軟骨を境に気管となる.気管はさらに,気管支,細気管支,終末細気管支,呼吸細気管支,肺胞道,肺胞・肺胞嚢となる.気管の粘膜は,杯細胞を含む線毛円柱上皮に覆われ,基底膜側に予備細胞が存在する.これらの上皮を取り囲むように軟骨や線維性結合組織が存在し,その中に気管付属腺や平滑筋がある(図1).気管支の上皮は,基本的に気管と同様ではあるが,細気管支を境に軟骨は消失し,杯細胞は減少し,それに代わってクララ細胞(Clara cell)が出現する.また,付属腺も徐々に消失する.気管から細気管支に至るまで,リンパ装置が結合組織中に認められ,bronchus-associated lymphoid tissue(BALT)と呼ばれる.肺胞はガス交換を司る扁平な型肺胞上皮細胞と,オスミウム酸好性のサーファクタントを分泌する立方状の型肺胞上皮細胞で覆われている.また,肺胞腔内には炭粉を含む肺胞マクロファージ(dust cell)が存在する(図9).
正常な細胞像
細胞診に提出される呼吸器の検体としては,喀痰,気管支擦過物,気管支洗浄液,気管支肺胞洗浄液(bronchoalveolar lavage,BAL),経気管支的穿刺吸引細胞診,経皮的穿刺吸引細胞診などがある.これらの検体に出現しうる細胞には,上皮系細胞としては口腔由来の▲平上皮細胞,気道系由来の線毛円柱上皮細胞,杯細胞,肺胞上皮細胞などがあり,間葉系細胞としては筋細胞,軟骨細胞,線維芽細胞,血球系の細胞としては赤血球,好中球,好酸球,リンパ球,組織球,巨核球などがある.喀痰は健常人ではほとんど出ない.検体中にdust cellが含まれていることが,肺から採取された検体であることの根拠になり,この細胞が存在しない検体は,肺の細胞診検体としては不適切といえる.
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