けんさ質問箱Q&A
ホルマリン固定液の種類と特性
荒井 政和
1
1NTT東日本関東病院病理診断部
pp.389-391
発行日 2005年4月1日
Published Date 2005/4/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1543100532
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ホルマリン固定の際には10%ホルマリン,中性ホルマリン,リリー(Lilly)の緩衝ホルマリン,等張ホルマリンなど多くのホルマリン固定液が使われますが,一般に「緩衝ホルマリン」といえばどれを指すのですか.それぞれのホルマリン液の長所・短所,また使い分けかたを教えてください.(名古屋市 K.T.生)
はじめに
「緩衝ホルマリン」といえば,リン緩衝ホルマリン(pH7.2)を指す.中性域のホルマリンであるため,中性ホルマリンや等張ホルマリンと勘違いされがちであるが,大きく違う点は緩衝液を使用しているかどうかである.
緩衝液とは,弱酸とその塩(ナトリウム塩など)との,または弱塩基とその塩との組み合わせで調製された溶液で,多少の酸や塩基が加わってもpHが変動しないのが特徴である.緩衝ホルマリンとは,リン酸二水素ナトリウム(二水和物)とリン酸水素二ナトリウム(十二水和物)とを混合しpHを調整した緩衝液に,ホルマリンを加えたものである.これに対して中性ホルマリンや等張ホルマリンは,ホルマリンに塩基を加えることで,単にpHを中性域にした溶液であり,酸や塩基が加わるとpHは変動してしまう.
質問にあるように,現在は各種ホルマリン固定液が考案され使用されている.それぞれのホルマリン固定液の特長とその使い分け,固定液の浸透性や,固定に対する時間や温度についても併せて述べる.
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