増刊号 一線診療のための臨床検査
第II章 各論―検査編
1. 微生物検査
1)顕微鏡検査
(1)細胞の検査
相原 雅典
1
1高根病院検査部
pp.1142-1146
発行日 2005年10月15日
Published Date 2005/10/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1543100251
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はじめに
レーウェンフック(Leeuwenhoek)による顕微鏡の発明と微生物の発見は正に臨床検査の原点であり,近代医学の黎明期における感染症診断に果たした役割は計り知れないほど大きかったものと思われる.初めて顕微鏡で患者検体を観察した人は,まず正常と異常とを識別する必要に迫られたであろうし,そのため正常時の人体の構造や反応を把握する必要があったはずである.その時代の感染症研究者の関心は,標本中で見られるすべての事象を解明することに向けられ,どんな些細な現象をも見逃さず捉えようとしたのではなかっただろうか.その姿勢は,犯罪現場を這い回るように証拠探しをする刑事や,火災現場を検証する消防士のそれと同じであり,「顕微鏡による感染現場の検証」が疾患の原因解明の鍵となる情報をもたらすことを誰もが疑わなかったに違いない.遺伝子診断法を含むさまざまな検査法の開発により疾患の診断精度は格段に向上した今日においても,塗抹標本の顕微鏡検査は病的現場の検証作業として疾患原因の追及や病態把握になくてはならないことに変わりはない.
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