検査じょうほう室 生化学:臓器マーカー
膵疾患マーカー
三宅 一德
1
1順天堂大学医学部臨床病理学教室
pp.1523-1525
発行日 2005年12月1日
Published Date 2005/12/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1543100205
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はじめに
膵臓は,かつてはその疾患の診断や治療が困難なことから「暗黒の臓器」と呼ばれていた.近年では,多くの膵疾患マーカーが日常検査でも測定されるようになり,画像診断技術の著しい進歩もあって,膵疾患の診断は容易になったようにみえる.しかし,最近の統計でも,重症急性膵炎患者の死亡率は20%を超え,膵癌は手術可能な例に限っても5年生存率はわずか13%であり,そもそも切除率自体が30~40%と非常に低い1).治療の困難さがその主因といえるが,検査診断にかかわる問題点の存在―膵疾患マーカーの進歩とその診断特性を反映した効率的な診断が普及していないこと―の関与が指摘されている2).
近年,日本腹部救急医学会,日本膵臓学会,厚労省研究班により,EBM(evidince-based medicine,根拠に基づく医療)の手法に基づく急性膵炎についての診療ガイドライン3)が出版された.その作成課程で膵疾患診断マーカーにかかわるエビデンスの網羅的検索が行われ,診断特性の再評価が行われた.ここでは,この再評価の知見を主体に,膵疾患マーカーの特性を整理したい.
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