病気のはなし
赤痢アメーバ症
増田 剛太
1
1前東京都立北療育医療センター
pp.1352-1357
発行日 2005年11月1日
Published Date 2005/11/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1543100157
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新しい知見
世界人口の約10%(5億人)の糞便中から光学顕微鏡的に証明され,従来から“赤痢アメーバ”(Entamoeba histolytica)と呼ばれてきた単細胞生物は,今日,病原種である狭義の赤痢アメーバE. histolyticaと非病原種であるEntamoeba disparとに大別される.ヒトに感染した原虫が狭義のE. histolyticaである場合,発症者にあっては当然治療が必要になるが,無症候性感染者(キャリア)や症状が軽微な慢性感染者であっても他宿主への感染源となるため原虫駆除が必要である.E. disparは免疫不全ヒト宿主でも病原性を示さず,感染者にあっては駆除する必要がない.原虫の同定は主として遺伝子学的手法,あるいは特定の抗原検出法により行われるが,日本国内ではまだ一般検査化していない.したがって,形態学的に“赤痢アメーバ”による感染を疑うが,分離された原虫がE. histolytica(狭義)と同定されていない症例の検査成績は現時点ではE. histolytica/E. dispar陽性と報告すべきである1).大腸炎や肝膿瘍などを発症している症例は原虫種が未同定であっても,臨床的にE. histolytica陽性と解釈して投薬する.なお,アメーバ性大腸炎や肝膿瘍患者との濃厚接触者,また赤痢アメーバ症集団発生関係者では,たとえ原虫種が同定されていない無症状症例でも駆除を試みることが勧められる.
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