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血栓症急性期の病態把握に有用な凝血分子マーカー,フィブリンモノマー複合体
山口 桂司
1
,
北島 勲
1
1富山医科薬科大学医学部臨床検査医学講座
pp.785-788
発行日 2005年8月1日
Published Date 2005/8/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1543100101
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はじめに
近年,高齢化や生活習慣の欧米化に伴って,わが国でも血栓・塞栓症は増加傾向にある.新潟県中越地震後の車中生活によって下肢深部静脈血栓症や肺血栓塞栓症が多発したことは記憶に新しい.心筋梗塞,脳梗塞,肺血栓塞栓症は生命にかかわる血栓性疾患であり,早期診断と早期治療が重要である.今まで,凝固線溶の分子マーカーとして,トロンビン-アンチトロンビン複合体(thrombin-antithrombin complex,TAT),プロトロンビンフラグメント1+2(prothrombin fragment,PF1+2),フィブリノペプタイドA(fibrinopeptide A,FPA),Dダイマーなどが利用されてきた.しかし,これらは凝固系活性化の最終段階産物であり,血栓症の結果の評価として利用され,その有用性に関しては議論がある.近年,フィブリンモノマー複合体(fibrin monomer complex,FMC)の新しい抗体が作製され,その定量化により血栓症急性期の病態の予知・早期診断としての有用性が期待されている.
本稿ではなぜFMCが急性期の病態を捉えることができるのか,抗体の原理と臨床データを示すとともに,今後の臨床検査への応用について述べる.
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