- 有料閲覧
- 文献概要
免疫系には絶えず侵入する異物に対して迅速に働く自然免疫と,異物が侵入してから数日後に作動する獲得免疫に分類される.初めての病原体が侵入した際,ただちにT細胞やB細胞を主とする感染防御機構すなわち獲得免疫が作動するわけではない.自然免疫は多くの病原微生物を認識しこれを迅速に排除し,炎症を起こす一連のシグナル蛋白質,すなわちサイトカインによって獲得免疫機構へ誘導する.最近,自然免疫には多くの発見があり,感染症や自己免疫疾患の解明に新たな進展が期待されている.
微生物の侵入に対する最初のバリアーは皮膚表層の角質である.さらに,組織には好中球やマクロファージなどの貪食細胞,樹状細胞,NK(natural killer)細胞,γδT細胞などが待ち構えている.化膿菌と呼ばれているブドウ球菌,肺炎球菌,連鎖球菌,緑膿菌,大腸菌などが皮膚のバリアーを破って侵入したとき,最初に対処するのが常に体内を循環している好中球である.細菌を捕らえた好中球やマクロファージはIL(interleukin)-8(ケモカイン),TNF(tumor necrosis factor,腫瘍壊死因子)-αやIL-1などを産生する.IL-8は応援を乞うべく血流中の好中球やマクロファージを感染部位に誘引する物質である.TNF-αは感染組織近傍の血管内皮細胞に接着分子を発現させ遊走してきた仲間を接着して引き止め,さらに血管の透過性を亢進させて感染組織に誘引する.接着分子とはTNF-αにより血管内皮細胞上にセレクチンおよびLFA(lymphocyte function-associated antigen,リンパ球機能関連抗原)-1を発現させて好中球に発現しているシアリルルイスxおよびICAM(intercellular adhesion molecule,細胞間接着分子)-1をそれぞれ結合する(第33巻第2号,第3号参照).IL-1,IL-8およびTNF-αは炎症性サイトカインと呼ばれ,免疫担当細胞を活性化し炎症反応を起こして病原体感染の拡大を防いでいる(図1).
Copyright © 2005, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.