今月の主題 自己免疫病
総説
自己免疫の考えかた
澤田 滋正
1
,
末永 論介
1
Shigemasa SAWADA
1
,
Ronsuke SUENAGA
1
1日本大学医学部第一内科
pp.269-275
発行日 1983年3月15日
Published Date 1983/3/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1542917411
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はじめに
今月の主題である"自己免疫病"は,近代免疫学の発展に伴い,必然的につけられた病名である.近代免疫学の夜明けは,やはり1961年のMillerらによる,免疫中枢である胸腺の機能の解明であろう.Millerらは,ウイルスで発症するマウス白血病が胸腺摘出によってどう影響を受けるのかの研究中,新生児期胸腺摘出群が異常に死亡率の高いことに注目し,新生児期胸腺が抗体産生に重要な役割を果たしていることを明らかにした.さらに,1970年になると,末梢血およびリンパ組織のリンパ球はT細胞とB細胞との二つに分けられることが明らかにされ,それぞれのリンパ球のマーカーによって分離され,機能を調べることができるようになった.これらの免疫学上の重要な発見に伴い,種々の疾病に正常人では決して検出されることのできない,自己成分に対する抗体(自己抗体)の発見が相次ぎ,にわかに臨床において自己免疫病なる疾病の存在が重要性を帯びてきたわけである.
KlempererやPollackらの病理学者に提唱された膠原病(collagen disease)は実に古く,1942年である.この膠原病には血清グロブリンが増加しており,同時に形質細胞の浸潤が特徴であると指摘されていた.実はこの膠原病の多くに自己抗体が発見されるに至り,この疾病の根底は免疫担当組織の異常であることが明らかにされ,自己免疫病の範疇に入るようになった.
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