入門講座 血清
抗グロブリン試験(クームズCoombs試験)
松橋 直
1
1東大医学部血清学
pp.740
発行日 1967年10月15日
Published Date 1967/10/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1542917178
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赤血球のように細胞成分に対する抗体のなかには,生理食塩水中で凝集能力をもつ抗体(定型抗体,完全抗体)と,生理食塩水中では凝集能力をもたず反応条件をいろいろとかえた場合にはじめて凝集能力をもつ抗体(非定型抗体,不完全抗体)とがある。後者に属する抗体,たとえば抗Rh0(D)抗体は生理食塩水中で赤血球と反応させると赤血球に結合することはするが凝集をおこさせることができない。ところが,この抗Rh抗体を20%以上のアルブミン中で反応させると凝集がおこる。また,トリプシン・パパイン・プロメリンなどで赤血球を処置させてこの抗体と反応させると生理食塩水中で凝集がおこるようになる。しかし,赤血球に抗体が結合したことは推定するしかない。ところが,Coombsはこれを具体的に証明するため,抗体が結合していると思われる赤血球をよく洗い,これにヒト抗体グロブリンに対する沈降性抗体を加えたところ凝集がみられた。これにより,赤血球の抗原に抗体が結合することが明瞭に証明されたので,彼の貢献をたたえ一般にCoombs試験とよんでいる。しかし,抗体グロブリンに対する抗体即ち抗グロブリン抗体を加えるばかりでなく,クームズの頃よりもさらに広範な立場から検討されているので,これを抗グロブリン試験とよんでいる。そして,生体内ですでに抗体が結合していることを知る方法を直接法とよび,試験管内で抗体と抗原とを反応させてから試験を行なう方法を間接法とよんでいる。
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