技術解説
実用顕微鏡写真撮影法
渡辺 恒彦
1
1東京逓信病院病理検査科
pp.11-15
発行日 1961年1月15日
Published Date 1961/1/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1542916985
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これから述べることは,学術的な顕微鏡写真についての解説ではない。筆者は一病院の病理組織検査室に勤務するいわば解剖屋である。顕微鏡は商売道具であるから使い方は頻繁であるが,その光学的構成についての知識はほとんどしろうとである。さらに写真についてもやはりおなじである。顕微鏡についても,写真についてもしろうとの筆者が,この小文を書くことになつたのには,実は少しばかりの理由がある。
第一の理由は,多く人は顕微鏡写真は装置もものものしく,技術も極めてむつかしいと思つているが,実は装置も甚だ簡単ですむし,技術もそれほどむつかしくないからである。ただし,ここでいう顕微鏡写真とは,主として染色した標本の一部を各種の倍率で撮影して,記録や説明に用いるいわば実用的写真のことで,写真をデータにして研究に用いるいわば研究用写真(おそらく数は多くないと思うが)のことではない。この頃顕微鏡メーカーがしばしば口にするKöhler照明にしても,研究用のものはいざ知らず,実用的顕微鏡写真にはむしろ無用の長物に近い。現にわれわれは日常の鏡検にはこうした照明など用いてはいない。筆者が述べたいのは,日常の鏡検からきわめて簡単に切り換えられ,しかも十分実用的なものが得られるような顕微鏡写真装置と技術についてである。
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