検査室メモ
急がば廻れ鞭毛染色のコツ
広明 竹雄
1
1国立東京第一病院研究検査科
pp.516
発行日 1967年7月15日
Published Date 1967/7/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1542916679
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世はまさに原子の時代。われわれを取りまく全てがスピーディになり,必然的に生活のテンポも早められつつある。しかし自然のテンポ,地球の自転と公転は,過去未来ともに変ることはないであろうし,この自然の中での草木の生育期間は古代から変化していない。つまり,われわれの生活は,この大自然の永遠のリズムと,加速的な人工のリズムとの調和の中で営まれていることになる。そして人々の心は,より充実したものを求めるために,より生活のテンポを早め,よりセッカチになりつつあることも事実であろう。
臨床検査の分野においても,オートアナライザーやオートテクニコンを使用したり,加温または酵素を添加し化学反応を大幅に促進することによりて,能率をより良くし得る場合もあるが,その反面,細菌やウイルスの培養時間を短縮することはほとんど不可能に近い。つまり自然のリズムに逆らうことは無益に等しいのである。しかし,われわれは無意識にこの自然のテンポを無視して失敗し,無駄骨を折っている場合が意外に多いのではなかろうか。その好い例に鞭毛染色がある。成書をみると鞭毛染色法は箇条書きにされ,染色液の処方も懇切丁寧に述べられている。だが,いくら忠実に示された通りの手技を億どこしても,おそらく鞭毛は染まらないであろう。
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