特集 血液検査の問題点
16 血液凝固測定の問題点・1—スクリーニング検査の範囲のもの
梅垣 健三
1
1奈医大・中央臨床検査部
pp.951-959
発行日 1968年12月1日
Published Date 1968/12/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1542916551
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生体内にては,血液は凝固系と線維素溶解(線溶)系とが,互いに平衡状態を保ち循環している。なんらかの原因により,このバランスが失われたときに,出血あるいは血栓形成という現象が生ずる。日常診療において,臨床医は出血に遭遇することが多く,先天性あるいは後天性出血性素質の鑑別,術前の出血傾向の有無の検索,あるいは血栓症に対する抗凝血薬療法のcontrolなどのために,出血に関する検査を行なう必要が,しだいに増加してきた。一方,最近10数年間に凝固機転の解明は急速な進歩を示し,とりわけ,凝固第1相において著しいものがある。これに伴い複雑な凝固因子の名称の統一なども行なわれ,従来むずかしいとされていた血液凝固も,しだいに一般に理解されるようになってきた。
しかしながら,止血機構は明らかになり,しだいに化学的分析の方向に進んできてはいるものの,微妙な生体内での反応を解明するにはまだ道は遠く,したがって凝血学的検査は各検査室・研究室において,それぞれ独自の方法で行なわれ,多種多様で,正常値も区々である。このような状態の下では,出血に関しては,一般にどの範囲に検査を進めてゆけばよいのか,またどの方法を選択すればよいのか判断に迷う。日本臨床病理学会はこの解決のために,第12回総会(昭和40年11月)にて"血液凝固検査の標準化"をシンポジウムのテーマとしてとりあげ1-6),凝固検査の検査室への導入をはかった。
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