入門講座 血清
溶血反応と補体
松橋 直
1
1東大医学部血清学
pp.440
発行日 1967年6月15日
Published Date 1967/6/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1542916159
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血清学の領域でつかう溶血反応(Hemolysis)という概念は,赤血球と抗体とが反応するとき,新鮮な血清を存在させると,このなかの補体成分の働きにより,赤血球が溶けて中のヘモグロビンが溶け出すことを意味している。したがって結果的には赤血球を水に入れた場合に,滲透圧の高い赤血球の中に水が入りこみ,赤血球がパンクして中のヘモグロビンが溶け出す水溶血反応と似ているが,抗原抗体反応によっておこる点が根本的に異なっている。
溶血反応に重要な役割を演ずる補体(Complement,略してC′)とは,新鮮な動物血清中にある物質であるが単一なものでない。今日では,C′1,C′2,C′4,C′3a,C′3b,C′3c,C′3d,C′3e,C′3fの9成分が知られており,全成分の協力作用で抗体の結合した赤血球を溶血させる。補体は抗原,抗体複合物に結合する性質があり,後述の抗原抗体反応の一種である補体結合反応に重要な役割を演じている。なお,補体は生体外に出すと活性を失いやすく,氷室に保存しても数日しかもたない。
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