特集 グラフ特集臨床検査の基礎
組織迅速診断と細胞診
胸腹水の細胞診
石岡 国春
1
1東北大学山形内科
pp.54-57
発行日 1966年11月25日
Published Date 1966/11/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1542916033
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胸腹水の細胞診の最も重要な適応は悪性腫瘍であり,悪性腫瘍細胞を証明することによって胸腹水貯溜の原因が悪性腫瘍であることを直接的に証明することができる。胸腹水の細胞診は,胸腹水が容易に採取され,塗抹標本作製までの操作時間も短く,また悪性腫瘍性胸腹水中にはきわめて高率に腫瘍細胞を検出し得るので,胸腹水貯溜の原因が良性か悪性か不明である場合には疾患の予後および治療方針の決定にきわめて大きな臨床的意義を有する。胸腹水の物理化学的性状や肉眼的性状は,良性か悪性かの鑑別に間接的症状としてある程度役立ち得るが,確実な決め手とはならない。胸腹水の細胞診が一般物理化学的検査と同時に日常の検査として望まれるゆえんである。
胸腹水中に認められる細胞成分は,1)漿膜細胞,2)組織球様細胞(組織球,単球,食細胞,単球様細胞などとも呼ばれる),3)好中球,4)好酸球,5)好塩基球,6)リンパ球,7)形質細胞,8)単球,9)肥胖細胞,10)月重瘍細胞である。試験穿刺で,少量の胸腹水を採取した場合には,穿刺部の皮膚に由来する扁平上皮細胞が認められることもある。これらの細胞成分は原因疾患の種類,病期あるいは,合併症の有無などによって,細胞の数,細胞相互の比率に種々の差異がみられるのみでなく,同一細胞でも変性,崩壊をきたしたり,形態変化をきたすので,これらの細胞の形態学的特徴を熟知することが必要である。
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